ネットだけでは幸せになれない?日本のトップIT企業から学ぶ経営方法:前編

      2017/09/30

UPTORY(アプトリー)の歌川です。
コクヨホールにて開催されたJAIPA Cloud Conference 2017のメディアスポンサーとして、パネルディスカッションの模様をまとめさせていただきました。

■パネルディスカッション
2020年の日本を元気にする経営者パネルディスカッション。
日本のトップを走るIT企業経営者達は2020年を目前に何を思うのか?


【モデレータ】
・三井住友トラスト基礎研究所研究主幹 伊藤洋一氏 (上段左)

【パネリスト】
・サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久氏(上段右)
・株式会社DGホールディングス(旧DMMホールディングス)代表取締役社長 松栄立也氏(中段左)
・GMOクラウド株式会社 代表取締役社長 青山満氏(中段右)
・さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏(下段左)
・株式会社IDCフロンティア 代表取締役社長 志立正嗣氏(下段右)

経営では日本の競合は見ていない

伊藤 このパネルディスカッションは、『2020年の日本を元気にする経営者パネルディスカッション』となっていて、会場に来た人にも元気になっていただきたいという気持ちがあります。

登壇者とお聞きになっている方々の違いは何かと考えてみたら、登壇者はある意味一線を越えた人達です。お聞きの皆さんはITという新しいテクノロジーを今の企業システムにどう活かしていけばいいかと格闘している面があるのではないでしょうか。

まずは青野さんからお聞きしたいのですが、なぜ会社を「複業」だったり、コロコロ変化をさせる経営が出来ているのですか?

青野 経営をしていて常に意識しているのは、日本の競合は見ていなくて、世界的な大企業を見ていて、規模で100倍1,000倍違う企業を意識しています。その企業と、どう戦おうかと考えた時に、ある意味変な戦略を取らない限り勝ち目がないんですよね。

例えば、彼らは大きなオフィスを作ったら、弊社は分散型オフィスにするようなイメージです。普通に戦えないような企業を常に意識しているので、思い切った戦略が打てるのかなと思います。

伊藤 今のお話は面白いですよね。普通日本の会社は同業他社を気にしますよね?青野さんは登壇している方とも競争意識がないでしょう?

青野 ないですね。

他社を見ないでベストを尽くす

伊藤 そうですよね。「ベストを尽くすにはどのようにすればいいのか?」を考えていて発想の機転ですね。それが会社の仕組み・動機付け・雇用などに反映してると思うんですよ。
田中さんはどうでしょう?一カ月会社を休んでいたとのことですが。

田中 そうですね。他人を気にしないというのは結構重要なことだと思っています。
一カ月休むかどうかを考えたら、一部上場企業の社長で、子育てじゃなく嫁とどこかへ行ってリモートワークすらしないというのは中々ないことだと思いますよね。

戦略の話ですと、よく話しているのは他社を研究するよりも、ベストを尽くした方がいいということです。オリンピックで優勝するチームに共通しているのは、他チームを研究するよりもベストを尽くすチームが優勝することが多いです。

ビジネスも市場が固まっているところでは他社の研究はとても大事ですが、市場が広がっているのに相手を研究し過ぎると、市場を作らないことになってしまいますよね。『他社を見ないでベストを尽くす』これを徹底しないといけないですけど、残念ながらクラウド業界はちょっと競争が多くてレベルが低いのかなと思います。

伊藤 ベストを尽くさないでシェア研究している会社が多いと。

田中 そうですね。営業案件の多さや値段で勝った、この機能がどうかとかライバルを気にしすぎている感じがします。正直お客様よりもライバル企業の方が自社サービスを知ってたりしますからね。

仕事が好きで、一カ月300時間残業していた

伊藤 ありがとうございます。
次に、青山さんにお話を伺いたいのですが、航空計器メーカーの社員時代の仕事に対する限界と、現在の自分が行える裁量権みたいなのを、社員と経営者を比較してどうですか?

青山 そうですね。社員時代も私は仕事が大好きで、一カ月300時間残業していました(笑)組合と喧嘩して、「お前、言うことを聞けないなら会社辞めろ」と組合から言われたりしましたね(笑)。独立後は好きなだけ働けるので、こんなありがたいことはないです。場所も関係なく働けるので最大のモチベーションになっています。

その後、色々な事業をしてリーマンショックを経て分かったのは、私達は田中さんのおっしゃる通りで他社を比較していたんですね。いつの間にかそうなっていたのをつい最近気付きました。なので、自分自身の経験からも他社を比較するのではなく、『いかに自分達が何を出来るか』が大事だと思います。

伊藤 他社との比較はアメリカでもやってますよね。新しいテクノロジーが出ている中では、競争してもしょうがないなと私も思っていますが、志立さんはいかがですか?

志立 別の観点から言うと、クラウド業界でもアメリカや中国の投資は、私達と2桁3桁ぐらい違う企業がドカドカやってくるので、研究するまでもなく真正面からいっても吹っ飛ばされるんですよね。変な言い方をすると、第一ラウンドのど真ん中は日本では戦えないかもしれないと思います。

そこを認めた上でどうするんだというのを日本としては考える必要がありますよね。なので、日本の私達は仲間で切磋琢磨しながら存在意義を作っていかなくちゃ行けない。そこから日本の姿が見えて来ると思います。

アマゾンにアダルト動画配信で勝利した

伊藤 松栄さんは先ほどアマゾンに特定の分野で勝ったと話していましたが、どこでどうやって勝ったのですか?

松栄 そうですね。アマゾンとは以前からレンタルビデオなどで色々競合していまして、2013年にはアマゾンもアダルトの動画配信を始めたんです。「また来たな」と思ったのですが、アメリカはアダルトの規制があって難しい状況でした。

弊社はアダルトの配信権を50%持っていて、その上でアメリカの法的な規制をかけると25%ぐらいに下がるんですよね​。弊社の独占販売権を渡さなかったので、アマゾンは2015年に撤退したので結果として勝ちました(笑)。​

伊藤 やはり正面から立ち向かうと中々難しいから、世の中の規制を縫いながら勝つという事例ですね。

松栄 そうですね。一番最初は、他の問屋にも「アマゾンが来たら日本はやられる」と言って仲間を募ったんですよ。しかし、弊社も他の問屋も最大の顧客はアマゾンなので、みんな逆らいたくないと言うんですよね。その中で、弊社だけが逆らいました。

結果、他の問屋はどんどん中抜きされてるじゃないですか。あの時に連合を組んでいればと思うのが残念ですね。そのぐらい危機感がない会社がとても多いです。

弊社は、最初レンタルビデオからビデオ制作、インターネットになりましたが、他のテクノロジーが出てくじゃないですか。なので、投資投資の繰り返しでFXもなども始めています。その経験から、現状のビジネスは必ずダメになるのを前提に動いています。他がやらないようなこと、アマゾンがやらないのを想定しながらビジネスを作っています

ビジネスは半歩先を見るのが大切

伊藤 なるほど。青野さんがやられているグループウェアは国際的なものだし、外国人でも誰でも使えますね。Googleが来て、それで売り上げが上がらない時は何を考えましたか?どうしたら売上が伸びると考えましたか?

青野 そうですね。グループウェア業界もパッケージからクラウドという流れが来ると考えていました。しかし、私達が先陣を切ってしても、残念ながら世の中のマスを動かす力がないので、ずっと見てたんですよ。誰か強い会社が最初やってくれないかなと思っていた時に、Googleが来てマイクロソフトも反応して市場が出来てきました。

弊社はその動きをちょっと前から入手していて、スリップストリームみたいにちょい後ろをついていく方法を取りました。タイミングさえ逃さなければ、間違いなく日本人にも使いやすいと思ったので。確かに大手が好きなお客様が多いですが、何割かは弊社に来てくれると信じていました。残念ながらこのタイミングに乗れなかった国産のグループウェアは消えていきましたよね。

伊藤 面白いですね。半歩先を歩くのがポイントですよね。一歩二歩先だと社会から認知されずに終わってしまう。志立さんはどのように考えますか?

志立 その通りだと思います。ヤフオクとeBayのオークションも同じ関係だと思います。なので、半歩先に始めるのはとても大事だと思いますね。

伊藤 田中さんの考えはいかがでしょうか?

田中 シンプルに言うと、コンシューマーの購買行動はそんなすぐに変えられないですよね。なので、アマゾンで買い慣れてくると1円安いだけで移らないと思います。ここでポイントになるのは コンシューマーに売るのか売らないのかというキーワードで、弊社の顧客にサーバーを買った理由を聞くと、「みんな使っている」や「聞いたことある」、「前使っていた」などが多いです。

顧客行動を考えるとアマゾンのAWSを使っている人は、会社でもAWSでも使いがちですし、サイボウズLiveも無料で使えるので普段使っている顧客は会社に提案しやすいですよね。なので、コンシューマーをしっかり捕まえておけば、外国の会社に勝てる要素でもあると思います。

生き残るためのブランド戦略

伊藤 なるほど。ネームバリューのネームはとても重要だと思っていて、検索はGoogleというように連鎖が出来上がってしまうプロセスの中で、そこに上手く入れないと排除されてしまいますよね。

その中で、挑戦者がネームで固まりつつあるユーザーに自社のサービスを入れていくのは重要で、青野さんもテレビに出ているのもそこを意識していると思います。ネームを売っていくことについてはいかがですか?

青野 究極的にはブランド以外では勝てないかもしれないですね。大手は色々な商材がある中で総合ブランドだと思うのですが、弊社の戦略はある意味会社を大きくするところは諦めて、チームワークだけのブランドを突き詰めています。そうすると、チームワークでやりたいなって時に弊社を思い出してくれる確率が上がるのですよ。

ダイソンのようなイメージですよね。総合家電メーカーは日本にたくさんありますけど、掃除機になった瞬間にダイソンになる。ダイソンの方が、値段が倍高くても「なんか気持ちいいよね」や「ダイソンの掃除機だといっぱい吸いそうだし」と思ってくれる。このような独自のブランドを築くというのが生き残るために大事だと思っていて、弊社もこのような戦略を取っています。

伊藤 松栄さんは次々に商売は変わるとおっしゃっていたじゃないですか。だからDMMという名前を使わずにDGという名前にしたと。しかも、また来年には名前が変わるかもしれない中で、アイデンティティというか認知度はどのようにお考えでしょうか?

松栄 おかげさまで国内でDMMというのは、名刺交換で半数の男性が「いつもお世話になっています」となるぐらい知名度が高くなりました(笑)。外国になると認知度が高まる一方で、キリスト教徒が多い国ではアダルトだと動きにくくなるので、社名を変えたりして対応しています。

ブランドでいうと貴重というかありがたい経験をしたのですが、以前オークションで信頼性が問われるある物を出した時に、「DMMが偽物を売るわけがない」と圧倒的な信頼感で高値が付いたのです。

この経験で、絶対に不正があってはならないと社員一同で心に誓いましたね。それぐらいネームバリューというかブランドは大切だなと思うので、今後も精進していきたいと思います。

インターネットは日本人の幸せに直接繋がっていない



伊藤
 それは青野さんの公明正大に繋がりますね。嘘ついたら終わりですもんね。
ちょっと話題を変えて、経営者のモチベーションを聞いていると、自分が作り出した組織をどうやって上手く回転させて、社員が気持ちよく働ける職場を作るのがポイントなわけじゃないですか。

でも、アメリカ型の資本主義だったら収益だけですよね。そこにアメリカの行き詰まりの原因もあるような気がするのですが、この辺りは志立さんはどうお考えですか?

志立 最近思うのは、この20年の間でインターネットは世の中を便利にして、皆さん一生懸命頑張ってきたわけですが、結局日本人の幸せってこの20年ほぼ変わってなくて。

どちらかというと、ずっと下がってるんです。『インターネットは日本人の幸せに直接繋がっていない』。これは真摯に受け止めないといけないなと思っていますね。なぜかというと、株価至上主義なところで社員への給与配分比率の低下が原因です。皆さんは日本の社会を良くして幸せにするために働いているのに、特にこの10年は社員への給与配分が下がっています。

なので、これからの日本が最先端でやって行く経営のスタイルは、社員やその周りにいる皆さんを幸せにする経営を目指すべきじゃないかなと思います。

伊藤 アメリカは会社は株主のものだという考え方ですよね。でも、日本人は昔から良い悪いの問題は別として、会社は社員のものでもあるんだよという考えをしてきて、ITの会社の中にもそういう考えの経営者がいるのは非常に面白いと思いました。
田中さんはその辺はいかがでしょうか?

田中 あまりアメリカが日本がと言い過ぎると、危険かなと考えています。アメリカでも時価総額が高い会社は、社員を大事にしようという会社が多いですし、中途半端に大きい会社が株主資本主義とか言うと思うんですね。

それと、株主の思考も多様化していると感じています。​弊社もこの間、株主総会がありましたが、出てきた質問が「大阪の会社は本社を東京に移すことが多いが、そのような予定はないか?」といったローカルへの想いだったり、「これから労働者が取れなくなるけどエンジニアはどうやって確保して行くのか?」のような多種多様な内容になっています。

先ほどの配分の話をすると、会社が傾いた時に株価を上げようと効率化をして利益を出しても必ずしも株価は上がらなかったのです。そこで、成長路線に切り替えてとにかく配分を変えました。実際2年ぐらいで社員の平均給与を1割以上も上がってますし、直接雇用率がとても高まりました。

最終的には株主がリターンを得るというのが株式会社ですが、株主を一番に考えていては、結果として株主へのリターンとして還元できないと思います。『急がば回れ』「急がば」のところが重要で、社員やお客様を大事にすることで、結果として収益が上がると気付きました。この考え方は、先ほどの、利益を出さなければ行き詰まった経験をしたからこそ身に付いたのかなと思います。

後編はこちら

働き方改革の最新事例!IT業界が抱える長時間労働との付き合い方とは?:後編

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歌川貴之

プロインタビュアー/仕事と空き家マッチングが最も得意。生の職業情報を伝える求人情報サイトを運営し、企業向けに販促用のコンテンツ制作をしている。個人事業主のお店から芸能人・上場企業の社長など、様々な職業1,000人以上に会ってきた。

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